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【心理学科コラム】一陽来復

一陽来復

 みなさんは「一陽来復」という言葉を知っていますか。元は古代中国の「易経」にある言葉です。夏から秋,そして冬に向かって,太陽が出ている時間が少しずつ短くなっていき,冬至に一つの頂点に達し,その後,陽の気に移り,少しずつ昼が長くなっていくということを述べた言葉です。そこから転じて,悪いことが続いた後に良いことがめぐってくることとの意味に用いられたりします。

 私はこの言葉がとても好きです。とくに元の「易経」の暦に則した自然についての理解が好きです。その日その日は晴れの日があったり,曇りの日,雨の日があったり,暖かい日や寒い日があったりして,いったりきたりするのですが,冬至までは確実に夜が長くなっていくものの,その後は確実に陽が長くなっていくという,そういうことですね。夜,つまり闇が一番極まったところで陽に転ずるというところなど,うーんとうなっちゃいます。陽に転ずるためには,陰,すなわち闇が深まるところまで深まらなければならないというわけですね。そこまでちゃんと闇が深まれば,その後は少しずつではあっても確実に陽が長くなっていくのです。もし陽が長くなっていかないというのであれば,陰の深まりが足りないということかもしれません。

 私の専門は臨床心理学です。これまで30年以上心理療法・カウンセリングに携わってきました。その心理療法・カウンセリングの過程がまさに一陽来復という場合が少なくありません。良くなったり悪くなったりしながら,少しずつ人は変わっていくのですが,後から振り返ると,その潮目が変わったところは困難がもっとも大きくなったとき,大変さが極まったときだったと思えるのです。ただ,暦の冬至と違って困るのは,この心理療法・カウセリングの場合にはいつがその頂点なのかがわからないことです。ここが頂点で,その後はいったりきたりしながらも三寒四温で確実に回復するとわかればどれだけいいでしょう。それがわかれば,クライエントはそれまで困難が大きくなっていくとしても相当に耐えられるではないかと思います。しかし残念ながらそれはわかりません。いつまでこんなことが続くのか,この苦しみはどこまで大きくなるのか,クライエントはそんなふうに不安に感じます。場合によってはセラピストもです。その時にクライエントの問題についての一陽来復のような確実なしっかりとした見立て(見通し)があれば,なんとか耐えることがしやすくなります。そのようなしっかりとした見立てが立てられるよう,私たちは自験例だけでなく,事例検討会や事例報告・事例研究などを通してできるだけ多くの事例に触れておく必要があるのだと思います。

 ところで今年の冬至はいつかご存知ですか。12月21日(月)です。ゆず湯とカボチャをぜひ味わいましょう。その後確実に陽が長くなっていくのを楽しみにしながら。

(心理学科 髙橋)

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