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【環境科学科コラム】更新しました。

 水田雑草は農家から嫌われる存在だが,ここでは彼らのしたたかさを紹介しよう.

 作物を栽培する農家の立場からすれば雑草は招かれざる客である.夏季の繁茂最盛期には,たとえ除草をしても2週間ほどすれば旺盛に再生して再び除草が必要になる.手作業の除草では際限のない労力がかかってしまう.1950年代に導入された除草剤は,このような膨大な除草労働から農家の人々を解放した.それは現代農業における革命的な出来事と言ってよいだろう.一方,除草剤導入は水田雑草に大きなインパクトをもたらした.

 除草剤の導入によって水田雑草が一掃されたかというと,現実はそうではない.確かに導入当初は一掃されたかのように見えたが,その後の経過は複雑だ.1970年代には強力な薬剤の残留性が問題となり,低残留性の薬剤に転換するようになった.環境基準の規制強化に伴って,除草剤の種類も次々に変化していった.薬剤の種類が替われば,どの雑草によく効くかあるいは効かないかも変化する.そして,生き残る雑草の種類も次々に変化した.また,除草剤を長期間使い続ければ,その薬剤に対して抵抗性のある雑草が出現してくる.薬剤抵抗性系統の問題だ.これは,同じ薬剤を長期間使用すると必ず出てくる問題だ.抵抗性雑草が出現するとせっかくの除草剤が役に立たなくなってしまう.それどころか,抵抗性を獲得した雑草にとっては除草剤散布は大きな恵みとなる.除草剤を使用しない水田では様々な種類の雑草が生育しているが,彼らにとっての大きな問題は雑草同士の競争だ.自分よりも競走に強い雑草が茂っていれば,自分は繁茂することができない.ところが,除草剤はこの雑草同士の競争原理を根底から破壊してしまう.雑草が生育できないということは,そこには雑草同士の競争が無いことを意味する.そのような除草剤散布水田において,たまたま除草剤抵抗性の雑草が生まれた場合を考えてみよう.競争相手がいないので,除草剤の散布された水田ではその雑草だけが我が世の春を謳歌することになる.特定の種類の雑草の大繁茂である.これは,院内感染で問題視される耐性菌の蔓延と同様の現象である.

 近年の水田における雑草は除草剤のおかげで極端に減少したが,その一方で逆に増えている雑草もある.もちろん,増えているのは除草剤抵抗性を獲得した雑草だ.その種類はごくわずかだが,除草剤によって競争相手が消えてしまった水田一面に生育する.近年の水田では,コナギ,アメリカアゼナ,イヌホタルイ,ホソバヒメミソハギなどがそうした雑草だろう.薬剤を多用すればこのような抵抗性雑草の出現リスクは高まる.これは,薬剤使用の大きなジレンマだ.

 さて,近年は遺伝子を操作して除草剤に抵抗性を持つ作物の開発が行われている.なるほど,これはよいアイデアである.除草剤を使うと,枯れるのは雑草だけ,そして抵抗性作物だけは絶対に枯れない.なんともうまい話である.ただし,これには落とし穴もある.この除草剤抵抗性の遺伝子が雑草に伝搬したらどうなるか.それは,除草剤の効かない雑草の出現である.

 生物多様性を考える場合,こうした雑草たちとのつきあいをどのように考えればよいのだろうか.ぜひ私の講義の中で考えて欲しい.

環境科学科教員:藤井伸二

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