人間環境大学

インフォメーション

【心理学科コラム】更新しました。

 岡崎キャンパスの教員の城田です。今回の記事では、「録画の効用」についてお話しします。

 多分に漏れず本学も前期を中心に遠隔授業が実施される運びとなり、「オンデマンド型講義」のためのオンデマンド動画作成に明け暮れる2020年の春夏となりました。「Don't worry, be happy」という明確な根拠のない同僚教員からの励ましを胸に、「教育の質」を担保すべく、動画制作に取り組みました。それに際しては、映像制作を専門にしている大学院時代の先輩、音響機器に詳しいアマチュアミュージシャン仲間、最近友人の結婚式のために動画編集ソフトを購入したという友人(結婚したのは私ではありません)、ゲーム実況動画にハマっている学生など、関係各位に助言を求めました。そのうちにこちらも凝りだしてしまい、動画のオープニングBGMに自作曲を添え始める等、受講生もあきれる始末でしたが、今回得られたものは、学生の嘆息だけではありません。

 私事にわたりますが、大学で講義を担当するようになる以前、大学院生時代に、中学校・高等学校で非常勤講師として社会科・公民科の授業を受け持たせていただきました。さらにその以前、学部生時代には、小学校・中学校で教育実習生として教壇に立つ機会がありました。小学校の教育実習では、「あなたの学習指導案は理屈っぽくて何か論文のようだ」とのことで、芳しくない思い出もありますが、ここで話題にしたいのは、とくに中学校での教育実習の経験です。

 10年近く前のことです。中学校での私の実習を指導してくださった先生は、その先生自身がたまたま学生時代に哲学を専攻されていたということもあり(私の専攻も哲学です)、近しいものを感じられたのか、大変手厚く指導してくださいました。夜が更けるまで私の指導案に助言してくださった後に、「私は朝5時に学校に戻ってきますが、あなたは何時に来ますか」と問われ、「4時55分です」と答えた日々のことは忘れません。その熱心なご指導の中でとりわけ印象的だったのは、私の授業を毎回のように執拗に録画してくださり、後からその映像を見ながら、「ここでのあなたの説明は早口ですね」、「ここで一度声を潜めてそのあと一気にバーンと!」といった、実践的なアドバイスをくださったことです。また先生は、「自分がどう見られているのかを確かめるのではなく、生徒たちがあなたの授業をどう見ているのかを確かめましょう」と、神妙な面持ちでおっしゃっていました。

 期せずして今回、この遠隔授業実施に伴い、再び自分の授業を録画して振り返る機会に恵まれました。自分自身の授業を見直すことは、自分自身の内的な意識(「自分では○○しているつもり」)と、実際の現れ方(「だけど△△になっている」)とのズレを一つ一つ見直していくことであり、教育の質を向上させていくために効果的な作業であると、あらためて思います。そして、それは同時に、「自分自身がよりよく見られたい」という思いと、「学生にとってよりよい講義にしたい」という思いとの双方が、自己の内で複雑に入り組みあって共存していることを再発見してしまう、少々煩わしい試みでもあります。己のさもしさを見るにつけ辟易する面もありますが、しかし、自己の事実と一定の距離をもって向き合いつつ、「相手が自分の講義をどう見ているのか」という視点から、ポストコロナの時代にも、時折授業を録画して見返してみようと考えています。

 人前で話す機会のある方、あるいは就職や入試の面接を控えている方なども、ぜひ録画を試してみてください。思わぬズレに気がつくかもしれません。ただし、やり過ぎは禁物です。「Don't worry, be happy」で。(心理学科 城田)

  • OPEN CAMPUS
  • 松山OC交通費補助・無料宿泊
  • 松山2学部 一人暮らしサポート
  • 資料請求
  • 資料請求
  • ONLINE OPEN CAMPUS
  • デジタルパンフレット
  • 臨地実習指導者講習会(大府)